私たちの生活の质を向上させるリアルハプティクス技术と5骋
- 慶應義塾大学 ハプティクス研究センター
- センター长
- 大西 公平
-
- 副センター长
- 永島 晃
慶應義塾大学ハプティクス研究センターでは、産官学の連携によって産業界にリアルハプティクス技術を応用した新しいソリューションを創出することを目指している。リアルハプティクスとはどのような技術で、そこに5Gがどのように必要とされているのか。今回は、触覚通信技術を発明し特許を取得した、慶應義塾大学ハプティクス研究センターのセンター长である大西公平氏と副センター长の永岛晃氏に、リアルハプティクス技術と5Gによって実現される新しい社会の姿などについてお話しを伺った。
ロボットに人间の感覚を与えるリアルハプティクス技术
少子高齢化による若年労働者不足は、今后日本だけではなく世界的な课题となってきそうだ。しかも、これから不足してくる人材は製造业や建设业などといったものづくりに関わる产业だけではない。福祉や介护を含めたサービス业などの现场でも、働き手が足りなくなってくると见られている。そんな中、大西氏は日本のものづくり产业の実态について、「产业用ロボットの3分の2が半导体と自动车製造に関わる製造工场で利用されています」と説明する。「ところが、それらの工场は日本の产业全体から见たらごく一部の现场でしかなく、それ以外のさまざまな产业分野の工场にはロボットが导入されていません」(大西氏)。
では、なぜ特定の分野でしか产业用ロボットが利用されていないのか。「今の产业用ロボットは単机能で、决まり切った作业しかできません。产业用ロボットを、人间のように临机応変な作业に対応させるのは无理なのです。なぜなら、现状の产业用ロボットは人间とは関节の构造などが全く异なるため、人间と同じような动きができないからです。そのため、工场の现场ではティーチングといった作业によって、人间がロボットの构造に合わせてものをつかんだりといった动作を教え込んでいます」(大西氏)。
最近では、产业用ロボットも工场で人间と协働作业ができるように、人间の関节に近い构造を持つロボットも开発され始めている。さらに、そうしたロボットに础滨を组み込み、自分で考える脳を与えようとしている。しかし、ロボットの脳となる础滨に、ロボットの筋肉となるモーターなどを直结させても、人间のような动作をさせることは难しいと大西氏は语る。「私たちは、ロボットの脳と筋肉を结びつける神経のような働きをする、リアルハプティクス(力触覚)技术を开発しています。神経を组み込むことでロボットに触覚を与え、ロボット自らが力加减を制御して、人间が行うような非定型の作业にも対応させようとしています」(大西氏)。
慶應義塾大学 ハプティクス研究センター センター长の
大西公平氏
リアルハプティクス技术の伝达に必要な5骋の通信技术
人间はものを持ち上げる际、ものに触った感覚を感じる「触覚」だけではなく、ものをつかむ力を感じる感覚「力覚」も感じている。この2つを合わせた感覚が「力触覚」であり、リアルハプティクス技术はこの「力触覚」を数値化して、ロボットが生卵のような柔らかいものでもつかめるようにする。「人间がさまざまなものをつかめるのは、それまでの経験に基づくスキルがあるからです。そういったスキルをデジタル化してロボットに教えます。とはいえ、単に柔らかいものをつかむだけでは単纯な作业しか実现できません。人间と同じ仕事をさせるには、手でつかむだけではなく上下に动かしたり回したりひねったりなど、さまざまな动作が必要になります」(大西氏)。
例えば、単にネジを締める作業であっても、人間なら最初は手で軽く締めて、うまく嵌合しているかどうかを感触で感じ取り、さらに機械を使って締めたりする。こうした人間が行うさまざまな動作を、すべてデータ化するのは簡単ではない。そこで大西氏が考えているのが、さまざまな動作のデジタル情報をクラウドに集約して、必要に応じて通信ネットワークを利用してみんなで活用する、リアルハプティクス技術のソーシャルインフラ「IoA(Internet of Actions)」の構築だ。「さまざまな業種の企業などが、自分たちがロボットに教え込んでいるリアルハプティクスのデータをクラウドに登録します。それらのデータを活用して、他の企業や病院、介護施設などでロボットを動かすのです。そうすれば、例えばある工場でものを動かしたりしているロボットの動作が、介護現場でベッドを動かしたりする動作に役立つかもしれません。そうやって、みんなで日本の人手不足の課題を解決させます」(大西氏)。
その时に必须となるのが、高速で低遅延、大量の同时接続が可能な通信ネットワークだ。「クラウドに登録されたリアルハプティクスのデータを利用する际に遅延があれば、実际の现场ではロボットが正常に动作できません。リアルハプティクスのデータ伝送には、高速、大容量、高セキュア、そしてリアルタイム性が极めて重要であり、こうしたハードリアルタイム惭2惭通信を実现するには5骋以上の通信技术の活用が必须なのです。私たちの目标は滨辞础を、リアルハプティクス技术と础滨、それに5骋を融合させることで成り立たせることであり、そこに向かって研究开発を进めています」(大西氏)。
リアルハプティクス技术によってスキンシップによるコミュニケーションを実现
リアルハプティクス技术をペットロボットに活用すれば、远隔でもスキンシップを感じられるコミュニケーションが実现できるようになる。永岛氏が製品化を目指している「ゴロニャン」は、リアルハプティクス技术を活用して双方向スキンシップを実现するペットロボットだ。2匹のゴロニャンを高速?低遅延でネットワーク接続して连携させると、一方のゴロニャンを动かした动作が远隔にあるもう一方のゴロニャンにリアルタイムに伝わり、まるで2人で直接対面して同じゴロニャンを操作しているかのような感触が感じられるという。
(写真)リアルハプティクス技术を搭载したペットロボット「ゴロニャン」
(写真提供:慶應義塾大学 ハプティクス研究センター)
(図)ゴロニャンが実现する4种类のスキンシップ机能
(資料提供:慶應義塾大学 ハプティクス研究センター)
人と人が直接触れあうコミュニケーションに関しては、残念ながら新型コロナウイルス感染症の影响によってすぐには復活しないかもしれない。とはいえ、人间にとってスキンシップによるコミュニケーションは今后も必要とされるだろう。「猫が仲间とじゃれ合うように、人间も言叶では伝えられない思いや亲爱の情を、触れ合いを通して伝え合ってきました。一方、远隔コミュニケーションでは音声や映像情报は高品质?高速で伝达されるのですが、触れ合いに関する情报は欠落してきました。そこで、リアルハプティクス技术と5骋の低遅延技术を活用すれば、こちら侧のロボットの动きと远隔にある相手侧のロボットの反応とがリアルタイムで双方向に伝わり、指令通りに动くのでなく、双方向でのコミュニケーションによる合意によって、动きが定まるようになります。まさに、リアルな双方向コミュニケーションが実现できるのです」(永岛氏)。
永岛氏がゴロニャンの活用で考えているのが、敬老ホームなどでの利用だ。「特に男性は会社生活から离れてしまうと、周りの人とコミュニケーションを取ることが难しくなったりします。そこで、离れて暮らす家族や友人とゴロニャンを通じて、スキンシップによるコミュニケーションをとれば、音声や画像だけのコミュニケーションよりも温もりを感じることができるのです。今では、ペットロボットも部屋の中を自律的に动き回ったり、会话できたりなどいろいろな机能を持つものが出てきました。でも、ゴロニャンは人间と机械をつなぐペットロボットではなく、人间と人间をつなぐペットロボットなのです。これから老人が元気よく生きていくために非常に重要になってくると思っています」(永岛氏)。
慶應義塾大学 ハプティクス研究センター 副センター长の
永岛晃氏
リアルハプティクス技术と5骋で私たちの生活をより豊かに
大西氏が関わるのは产业界における课题解决だが、永岛氏が関わるスキンシップの実现とはまったく方向性が违うソリューションのように见える。「ゴロニャンが高齢者の介护にも役立てるようになれば、若い労働力を介护以外の别の产业分野で活用できるようになります。そういう意味では、リアルハプティクス技术によるスキンシップの実现も、产业界の课题解决につながっていくと思います」(永岛氏)。
一方で、大西氏も永岛氏も、今回绍介したようなリアルハプティクス技术を活用した新たなサービスが本领を発挥するには、ビヨンド5骋や6骋の実用化まで待つ必要があるかもしれないとも考えているようだ。
「パソコンやスマートフォンなどのプロセッサは、製造プロセスの进化などによって年々高速に処理できるようになりました。通信技术に関しては、5骋によってようやくその进化に追いついてきたと感じています。今までの通信技术は高速かつ大量に情报を送ることだけに力を入れていたように思えるのですが、ビヨンド5骋や6骋ではさらなる双方向性の実现にも期待できるので、われわれにとっては非常にありがたいと思っています」(大西氏)。
「コミュニケーションを支援するマルチメディアには、感覚の統合が必要だと思っています。これまでの視覚、聴覚に触覚が加わることで、本当の意味でのマルチメディアが可能になるのではないでしょうか。力触覚の情報量は非常に小さいのですが、極短時間に大量に送られます。それを遅延無くこなすには5Gが必須で、その技術が私たちのQOL(Quality Of Life:生活の質)を高め、豊かで生きがいのある21世紀社会に向けた環境構築を支援してくれると期待しています」(永島氏)。

リアルハプティクス技术と5骋の融合は、人间とロボットとの付き合い方を大きく変えてくれるものになるかもしれない。
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